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ピロリ菌

ピロリ菌について

ピロリ菌について日本では多くの方がヘリコバクター・ピロリ菌に感染しています。ピロリ菌は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍、さらには胃がんのリスクを高める菌です。
特に、ピロリ菌に感染している場合の胃がん発症リスクは約9倍に増加し、萎縮性胃炎がある場合は約18倍、重度の場合には最大で70倍にも跳ね上がると言われています。

当院では、ピロリ菌の検査と除菌治療に注力しています。検査は内視鏡、呼気、血液検査など、さまざまな方法で容易に行うことが可能です。
除菌には、3種類の薬を1週間服用することで、約90%の確率でピロリ菌を排除できます。適切な服薬により、効果的な治療が期待できます。

ピロリ菌を調べる検査

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無を検査する方法は2つあり、胃カメラを使用する検査とそうでない検査があります。

胃カメラ検査中に実施できる検査

迅速ウレアーゼ検査

迅速ウレアーゼ検査は、尿素がアンモニアに変わる過程で活動する「ウレアーゼ」という酵素を利用した検査です。ヘリコバクター・ピロリ菌はこのウレアーゼを使って、アルカリ性のアンモニアを生成し、胃の酸性環境を中和して生存します。
この検査では、胃カメラで採取した組織サンプルに特定の反応液を用い、ピロリ菌のウレアーゼ活性を色の変化で迅速に判断します。ただし、除菌治療の効果を評価する時には使用できません。

鏡検法

胃カメラによって採取された組織をホルマリンで固定した後、顕微鏡を用いてヘリコバクター・ピロリ菌の有無を確認します。この方法は診断精度が比較的低いとされています。

培養法

胃カメラで採取した組織を用いてピロリ菌の培養を行い、感染の有無を検査します。培養には時間が必要なため、検査結果をお知らせするまでにはおおよそ1週間かかります。

内視鏡を用いない検査

尿素呼気試験法

尿素呼気試験法は、特定の薬剤を摂取する前後の呼気を分析することで、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染を検出する検査です。
ピロリ菌が生成するウレアーゼ酵素は、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、呼吸によって二酸化炭素が排出されます。
試験では、尿素を含む薬剤を飲む前と後の呼気を比較し、感染の有無を判定します。体に負担をかけずに約30分で結果が出るため、除菌治療後の確認にも適しています。
検査の精度を高めるためには、検査2時間前までには水分を摂取せず、4時間前までには食事を控える必要があります。

血中抗ピロリ菌抗体測定

血液検査により、ヘリコバクター・ピロリ菌に対するIgG抗体の有無を調べます。食事や薬の影響を受けないこの検査は、除菌後も抗体値が1年間は低下しないため、ピロリ菌の除菌成功の判定には適していません。

尿中抗ピロリ菌抗体測定

尿中に存在するヘリコバクター・ピロリ菌の抗体を調べる検査です。食事の影響を受けず、尿検査のみで行えるため、手軽に受けられるというメリットがあります。
そのため、健康診断や人間ドックでのピロリ菌感染のスクリーニングとしてよく利用されています。

便中ピロリ菌抗原測定

便中ピロリ菌抗原測定法は、便中のピロリ菌由来の抗原を検出することで感染の有無を調べる方法です。
食事の内容に左右されず、小さなお子様にも適用できるぐらい手軽で精度の高い検査とされています。感染の確認だけでなく、除菌治療の成果を判定する際にも信頼性があります。

注意点

ピロリ菌の感染検査や除菌治療を保険適用で受ける場合、胃カメラ検査が必要です。胃カメラ検査を伴わない感染検査や除菌治療は自費診療となります。

各ピロリ菌検査の精度について

ピロリ菌検査は、使用される手法によって特異度と感度が異なります。感度が高い検査で陽性と判定された場合、ピロリ菌に感染している可能性は高くなります。
逆に、特異度が高い検査で陰性と判定された場合、感染していない可能性が高いです。特異度と感度がほぼ100%に近い検査では、ピロリ菌感染の有無をより正確に確認できます。

ピロリ菌検査は保険適用となるか?

健康保険の適用となるピロリ菌感染検査

以前は、胃カメラ検査で胃潰瘍や十二指腸潰瘍など、特定の病状が確認された場合に限り、健康保険を用いてヘリコバクター・ピロリ菌の感染検査を行うことができました。
しかし、平成25年2月からは、保険診療の範囲が拡大し、胃カメラ検査で慢性胃炎と診断された際も、保険を利用して感染検査が可能になりました。さらに、胃カメラ検査でピロリ菌感染が陽性と判定された場合、保険を適用して除菌治療を受けることができます。ピロリ菌感染外来や消化器内科を受診し、胃カメラ検査を受けた患者様も、同様に保険適用の対象となります。

ピロリ菌の除菌治療を受けた方へ

ピロリ菌の除菌治療を受けた方へヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療を行っても、以下のような状況では胃がんのリスクが高まるため、定期的な内視鏡検査が推奨されます。

  • 除菌前に腸上皮化生や萎縮が重度であった場合
  • ご家族の誰かが胃がんを発症したことがある場合
  • 過去に胃がんを経験したことがある場合
  • 高齢者の場合

ピロリ菌の除菌は胃がんの発症リスクを減少させる効果があるとされていますが、それで全てのリスクがなくなるわけではありません。そのため、除菌後も慎重に経過観察を行う必要があります。ピロリ菌の除菌やその後の内視鏡検査に関しては、当院にお気軽にご相談いただければと思います。

人間ドックなどで6か月以内に胃カメラ検査を受けた方へ

胃カメラ検査を受けて6か月以内に慢性胃炎と診断された方は、健康保険を利用してヘリコバクター・ピロリ菌の感染検査が可能です。感染が確認された場合には、同じく保険を適用して除菌治療を受けることができます。