過敏性腸症候群とは
大腸カメラ検査で異常が見つからない場合でも、腹痛や便秘、下痢、腹部の膨満感が続く事があります。これらは消化器疾患の中でも特に多く、日本では約10~15%の方がこの症状を経験しているとされています。
過敏性腸症候群は生命を脅かす病気ではありませんが、急な腹痛でトイレに駆け込むなど、日々の生活に大きな支障をきたす恐れがあり、学校や職場での活動にも影響を及ぼすことがあります。
緊張、睡眠不足、疲労、そして肉体的・精神的ストレスが症状を引き起こしやすくします。これらはしばしば体質や心理的な問題と見なされがちですが、適切な治療によって改善することが可能です。
過敏性腸症候群は、腹痛を伴う便秘や下痢が主な症状ですが、疲れ、めまい、頭痛、腹部の張りなど他の症状も伴うことがあります。症状が長期間にわたって続く場合は、当院へご相談ください。
過敏性腸症候群によって起こる症状
過敏性腸症候群の症状は、主に下痢を繰り返すタイプ、便秘が主なタイプ、そして下痢と便秘が交互に起こるタイプの3つに大別されます。これらの症状の他にも、腹部の膨満感を伴うタイプもあります。
睡眠中には症状は現れず、緊張や不安などの心理的要因が発症のきっかけとなることもあります。
下痢型
突然の激しい腹痛に襲われ、トイレで水っぽい下痢が排出されます。
便をした後は一時的に症状が和らぎますが、1日に何度もこのような症状が出ることがあります。特に、朝の通学・通勤時に症状が現れやすい傾向があります。
便秘型
腹部の違和感や痛みが長期間続く便秘です。力を入れても、硬くて小さなウサギの糞のような便が僅かしか出ず、便が体に残っているような感覚(残便感)や腹痛が続きます。
交代型
便秘と下痢が交互に繰り返され、それに伴いお腹の不快感や痛みが生じます。
その他のタイプ
頻繁にガスが出たりお腹が鳴ったり、腹部が膨らんだりするなどの症状が目立つタイプもあります。
どのタイプにも、頭痛や吐き気が伴うことがあります。性別による傾向として、女性では便秘型が、男性では下痢型が発症しやすいとされています。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の具体的な原因は未だに特定されていないものの、多くの要素が組み合わさって起こるとされています。これまでの研究から、腸の知覚過敏や過剰な運動、そしてストレスが症状の発生に大きく寄与していることが示唆されています。
ストレス
激しいストレスにより、消化管の機能をコントロールする自律神経のバランスが乱れることがあります。
暴飲暴食などにより蠕動運動が過剰になる
消化管は蠕動運動によって内容物を前進させますが、暴飲暴食などの不規則な生活習慣やストレスが原因で、腸の蠕動運動が過剰になることがあります。それにより、症状を引き起こすことがあります。
腸の知覚過敏
腸内フローラの変化やストレスによりホルモンの分泌に問題が生じると、腸の知覚過敏が起こります。それにより、通常の刺激に対しても腸が過剰に反応することがあります。
過敏性腸症候群の診断方法
まずは大腸カメラ検査を実施して、腸に器質的な異常がないかをチェックします。異常が見つからない場合、過敏性腸症候群である可能性が考えられます。
さらに、患者様の食生活、服用している薬、既往症、現在抱えている主な症状、通常時と発症時の便の様子、症状の変遷、排便の頻度、症状が始まった時期などの情報をお伺いし、診断を行います。この診断プロセスは、国際的に認められたRome基準に基づいています。
Rome基準
以下の3つの条件のうち2つ以上に該当し、かつ過去3ヶ月間に月に3回以上お腹の不調や痛みが続いている場合、過敏性腸症候群の確定診断がつきます。
- 症状が現れると、便の形状や質が変わる。
- 症状の出現に伴い、排便の頻度が変わる。
- 排便後、症状が和らぐ傾向がある。
過敏性腸症候群の対処法
食生活の改善を含めた日常習慣の見直しと、症状を緩和するための薬物療法を組み合わせて行い、症状の軽減と再発防止を目指します。
薬物療法
患者様の症状や生活習慣などに合わせて、便秘や下痢を和らげる薬、腸の機能を整える薬などを処方します。症状に応じて、腹痛を軽減する薬、便の水分量を調節する薬、腸内フローラを正常化するプロバイオティクス、腸の動きを調整する薬などを使用します。下痢が主な症状の方には、腸の動きを正常にする薬や止痢薬が有効であり、便秘が主な症状の方には便を柔らかくする薬が推奨されます。
さらに、抗うつ薬や抗アレルギー薬も症状の改善に寄与することがあり、漢方薬の使用も検討されます。薬の効果を感じるまで最大2ヶ月程度かかることもあるため、治療は焦らずに続けることが大切です。
生活習慣
過敏性腸症候群における治療で重要なのは、生活習慣の改善です。具体的には、ストレスの軽減、十分な休息と睡眠の確保、適度な運動習慣、そして規則的な日常生活が重要視されます。
食習慣の改善
毎日3回、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。特に、脂質の多い食事や就寝前の食事、暴飲暴食などは消化器系に負担をかけるので避けるのが望ましいです。
胃酸の分泌を促す炭酸飲料やコーヒー、刺激の強いスパイスやアルコール類も注意が必要です。ただし、食事制限によるストレスが過剰にならないよう、無理なく続けられる範囲で食生活を楽しんでください。