潰瘍性大腸炎について
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に潰瘍やびらんが見られ、腹痛、血便、下痢などの症状が繰り返し発生する病気です。原因はまだ明確には解明されておらず、根治するための確立された治療法も存在しないため、難病に指定されています。
免疫の異常、睡眠不足、ストレスなどの環境的要因や遺伝的要因が組み合わさって発症するとされています。
日本では患者数が増加しており、2019年には12万人を超える報告があります。日本消化器病学会によると、性別に関わらず若年層に多く見られ、40代以上でも増加しています。
潰瘍性大腸炎の治療では、炎症を抑える方法が有効です。症状が軽減する寛解期と悪化する活動期が交互に訪れますが、寛解期にも継続的な治療を行えば、その期間を延ばすことは可能です。
難病指定医のため、書類作成が可能です。
当院では、豊富な経験をもとに内服の他生物学的製剤仕様や最新の薬剤使用も経験あり、安心して治療を受けられます。腹痛や血便、下痢などの症状に悩む方は、早めにご相談ください。
症状・重症度
腹痛、血便、下痢は、炎症性腸疾患の典型的な症状です。炎症が激しくなり広がると、冷や汗、めまい、頻脈、体重の減少、発熱などの貧血に関連する症状が現れることがあります。
さらに、炎症が悪化して腸壁の深いところまで侵すと、中毒性巨大結腸症、腸の穿孔、狭窄、大量出血など、緊急の医療処置が必要な合併症が生じるリスクがあります。また、関節、眼、皮膚など、腸以外の器官にも症状が出ることがあります。
重症度について
症状の重さに応じて以下のように、軽症、中等症、重症の3段階に分けられます。
これらの区分は、指定難病に関する特定医療費の受給資格を得るためにも重要で、医師の診断に基づいて決定されます。
軽症
1日に4回以下の排便があり、血便は少量です。頻脈、貧血、発熱などの全身症状は伴いません。
中等症
軽症と重症の中間に位置します。
重症
1日に6回以上の排便があり、明らかな血便が見られます。また、全身症状も同時に現れます。
潰瘍性大腸炎が起こる原因
潰瘍性大腸炎の発症原因はまだ完全には解明されていませんが、世界的な研究から、免疫系の異常やストレスといった環境要因、遺伝的要素が組み合わさって発症することが判明しています。
ストレスや睡眠不足
疲労が蓄積し、睡眠が不足すると、消化管をコントロールする自律神経が乱れ、症状の悪化につながる恐れがあります。
遺伝
特定の遺伝子が原因とは限らず、疾患が100%遺伝するわけではありません。
しかし、欧米での研究では、潰瘍性大腸炎の既往がある方の親族の約20%に、同様の炎症性腸疾患が見られることが報告されています。
免疫の異常
多くの研究で、免疫系の異常が発症に関与していることが明らかにされていますが、自己免疫異常がなぜ起こるのかについては、まだ明確な理由は分かっていません。
検査と診断
問診時には、現在服用中の薬、過去の病歴、症状の出現頻度、発症時期、自覚症状について詳細にお伺いします。感染症も似た症状を引き起こす可能性があるため、ご家族の病歴や海外渡航の有無も確認します。
その後、便検査、大腸内視鏡検査、血液検査を行い、これらの結果を総合的に分析して診断を下します。
検査内容
血液検査や便潜血検査、便培養検査、便中カルプロテクチン検査を通じて、貧血、出血、炎症の程度を評価します。
便潜血検査では、肉眼では確認できない微量の血液の有無を検出できます。
便培養検査では、潰瘍性大腸炎と症状が似ている細菌性腸炎の可能性を排除し、便中カルプロテクチン検査により腸の炎症状態を把握します。
大腸カメラ検査
大腸カメラ検査により、大腸の粘膜全体を直接観察し、クローン病や大腸がんなどの他の疾患との鑑別を行います。
この検査では、大腸特有の病変をチェックし、組織サンプルの採取を通して、多くの大腸疾患の診断を明確にすることが可能です。
潰瘍性大腸炎と診断された場合、炎症の程度や範囲を正確に把握することができ、それに基づいた最適な治療法を選択することができます。
また、慢性的な大腸粘膜の炎症は大腸がんのリスクを高めるため、症状が軽減しても炎症が残っている可能性があることから、定期的な大腸カメラ検査が重要とされます。
当院では、経験豊富な専門医が大腸カメラ検査を担当しており、鎮静剤を使用してリラックスした状態で検査を受けることができます。どうぞ安心してご利用ください。
潰瘍性大腸炎の改善策
潰瘍性大腸炎の治療は、病状の重症度、病変の位置、そして病気が寛解期にあるか活動期にあるかによって異なります。治療の目的は、薬を用いて大腸粘膜の炎症を抑えつつ、症状がない時期でも再発を防ぎ、健康な状態を維持することです。
5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)は、炎症を抑制し、再発を防ぐ効果があるため、病気の寛解期だけでなく活動期にも使用されます。強い炎症がある場合は、一時的にステロイドを使用して迅速に炎症を抑制します。ステロイドが適さない方や、ステロイドの使用を停止した後に症状が悪化した方には、免疫調整剤、免疫抑制剤、生物学的製剤を病状に応じて使用し、症状を安定させます。
治療には、注腸製剤、坐剤、注射剤、内服薬など、患者様の状態に合わせて様々な形態の薬を処方します。
日常生活の過ごし方
健康状態は、身体だけでなく心の状態にも密接に関連しています。そのため、十分な休息と質の良い睡眠を取り、規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。また、ストレスを適切にコントロールすることも、症状の改善に役立ちます。
食生活においては、1日3回のバランスの取れた食事を摂ることを推奨します。症状が現れている際は、腸に負担をかけないよう、刺激物や脂肪分、繊維質の少ない食事を選ぶことが望ましいです。
一方で、病状が安定している寛解期には、特に厳しい食事制限を設ける必要はありません。